恋するウサギちゃん速報

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iのi乗=約0.2!?

お久しぶりです。テストシーズン(受験シーズン)ですね。中の人も期末テストが約1週間後に迫っています…。これを乗り越えればしばらくはゆっくり出来るのでそれをモチベに頑張っていきたいと思います。受験生の方々も受験が終わればしばらくは遊べるのでそれをモチベに頑張って下さい!応援しています。

さて、今回の記事ですが期末テストに複素解析が含まれているということでそれ関係の記事を書きたいと思います。例に漏れず高校生向けの記事ですので厳密性は少し怪しいところがありますがご容赦下さい。

タイトルにもありますように今回はi(虚数単位)のi乗を求めたいと思います。前に書いた記事でe^iθ=cosθ+isinθ(θは実数)という式を導入しました。*1

高校範囲では指数に虚数が来ることはないのですがこれによりe(ネイピア数)のときは虚数乗を定義できたことになります(前の記事を読んでいない方はとりあえず結果は認めるという感じで読んで下さい)。せっかく虚数乗を定義出来ているのだからこれを使って定義を拡張していくべきだとは思いませんか?なのでこの結果からi^iを求めていきたいと思います。知りたいのはi^iなのでこれを文字zで置くことにします(i^i=z)。話を難しくしているのは指数にiがあるということですよね?なのでとりあえず両辺にlog(自然対数)をとることにします。真数条件*2を思いっきり破ってますね。0以下どころか真数に虚数が来る訳ですから笑。まあ気にせずやってみます。するとilogi=logzになります。これで考える対象がi^iからlogiに変わりました。logiが出せればz=e^(i×logi)となって、logiがわかっているのだから前述のe^iθ=cosθ+isinθを使いzが出せそうです!少し考える時間を取りたいと思います。logiを求めてみましょう。数学的な厳密さは置いておいて形式的な議論で構いません。








求まりましたか?

以下解答です。

 i=cosπ/2+isinπ/2=e^iπ/2ですよね?つまりlogi=iπ/2になりそうです。なので結局

z=e^(ilogi)=e^(-π/2)=0.2〜

が得られます*3

これによってタイトルの式が示された訳です。


お気付きの方もいるかもしれませんがこれでめでたしめでたしとはいきません。もちろん数学的な厳密さが気になる方もいるかもしれませんが、それを差し引いてもおかしな点があります。

そう、i=cosπ/2+isinπ/2のところです。確かにこの式は成立していますが、i=cos(π/2+2πn)+isin(π/2+2πn)(nは整数)ですからこれを使って上と同じ議論をすると

z=e^{-(π/2+2nπ)}が得られます。アレ?値がひとつに定まらない…?そうなんです。実は値がひとつに定まらないんですよね。


ここからは上の概説に対する補足です。一般に0以外の任意の複素数zはr,θ(rは正の実数,θは実数)を用いてz=r(cosθ+isinθ)という形でかけます。いわゆる極座標表示です。左辺を前半で紹介した公式で書き換えるとz=re^iθとなります。実数での話のアナロジー(類推)からlogz=logr+iθとなりそうです。logをとれば掛け算は足し算になり、loge^a=aという実数の範囲では成り立ってる式からです。なので複素数に対してのlogはこう定義するのが自然そうです。しかし先程の具体例からも分かるようにθに2π×(整数)分のバラエティを許してしまうことになります。なので大域的にlogをこのように定義するのはおかしな話になります。zに対してlogzは一通りの値を定めず、logは高校数学の意味での関数にならない訳ですから(このような関数を多価関数という)。ですがズレとして発生する2π×(整数)の整数の部分を固定することを約束すれば一通りに定まることになりますよね?なのでこの約束の元logzを上で定義したものとすればひとまずは上手く定まります(主値と言います。-π<θ≦πで制限をかけるのが一般的ですが0≦θ<2πも見かけます)。


ここからは細かい話です。めんどかったら読み飛ばしてもらっても構いません。

こうしても問題が発生する場合があり、それは関数の定義域に制限がかかっていない時です。原点中心に1周まわってくるようにzを動かせば始点と終点では2π分のズレが生じます。なので大域的にlogzを綺麗に定義することは出来ません。1周回りきる時に急に2πが0にリセットされたらlogの性質として持っていて欲しい連続性が欠如してしまいます。ですが局所的には上の式で上手く定義すること、というよりも別の式で定義して上を性質として導けることが可能です*4。局所的ならlogとして持っていて欲しい連続性どころか正則性*5が得られる訳です。



というわけで結論としてはi^iはe^{-(π/2+2nπ)}となるけども、その主値はe^-π/2となるわけです(ちなみにlogの主値をLogで表したりします)。

いかがでしょうか?複素解析では驚きの定理が沢山出てくるので是非勉強してみてください!面白いと思います。それでは!

*1:https://manjimath.hatenablog.jp/entry/2020/04/20/145442

*2:真数が0より大きくないとダメってやつ

*3:-はi×iから来てます

*4:単連結な領域で1を含み0を含まないような領域なら上手く行きます

*5:複素数の意味で微分可能であること、実数の意味で微分可能であることよりも遥かに強い条件で、例えば1回微分出来れば任意の回数微分出来るなど。これを仮定することにより複素解析における様々な驚きの定理(留数定理や一致の定理)を導くことが出来る。