恋するウサギちゃん速報

当ブログでは皆さまのリクエストをお待ちしてます。

e^iπ+1=0?

突然ですがあなたに好きな定理はありますか?

僕は三平方の定理が好き*1なのですが好きな公式や、美しい公式で検索するとタイトルにあるような
e^{i\pi} + 1 = 0
という式がトップで出てきます。解析的な動機で定義されたe(ネイピア数)と代数的な動機で定義されたi(虚数単位)と幾何的な動機で定義されたπ(円周率)、そして和と積の単位元である0と1が無駄なく全て登場してるという理由から美しいとされているそうです。ですが初めてこの式を見た人は疑問しか思い浮かばないでしょう*2。一見なんの脈絡もない3つの数が美しく関係しあっているのですから。また高校では指数に虚数が来ることは無いですしそこも疑問に思われるかもしれません。この公式(オイラーの公式という)*3を示すにはまずテイラー展開について学ばなければなりません。しかしいきなりテイラーの定理を証明し収束半径がどうたら…って記述していってもあなたは面白くないと思いますし、興味が無いかもしれません。それに厳密な証明は本を見れば載っていて検索をかければ出てくるのでこの記事では省かせて貰います。
さて、急に話を変えますが以下の問題あなたは解けますか?

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少し考えてみてください。








答えは

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となります。どうでしたか?恐らくこれくらいは解けたかと思われます。では次の問題です。


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これも少し考えてみてください。










答えが

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になりましたか?

それとも

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になりましたか?

どちらも条件を満たします。一体どういうことでしょうか?答えが2つあったってだけな気もしますが実は

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が任意の実数*4xについて成立するのです!!!
驚きではありませんか?このように整級数でない関数f(x)を整級数で表す(展開するという)ことが出来たら便利だと思いませんか?大学受験でよく出てくる以下のような問題もこれを知っていれば当たり前のように思えてくるはずです。

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項を片方に寄せて関数とみなして微分して増減を調べて解くのが受験数学の定石でしょうが、こういう形の不等式問題*5が寄せて微分で確実に解けるのにはちゃんと数学的背景があったんですね。


今までの議論から以下の式の意味がなんとなく分かると思います。*6 f:id:manJimath:20200519000108j:plain このような関数の展開方法をマクローリン展開と言います。マクローリン展開した式を途中でちょんぎったものは0近傍についてのf(x)の近似になっています。下のグラフを見てみて下さい

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分かりますかね?より高次の項までとってきた方が元の関数に近づくということと、0付近ではよく近似出来ているということの2つの事柄をグラフで表現しているのです。より一般に0だけではなく関数の定義域内の定数aに対しては

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となります。これをテイラー展開*7といいます。要するにテイラー展開というのは途中でちょんぎったりして関数を多項式で近似するためのものなんですね。


ではここでsinxとcosxをマクローリン展開してみて下さい。本来マクローリン展開可能かなどを考慮しなければいけませんがsinxとcosxは任意の実数*8マクローリン展開可能として下さい。












出来ましたか?

答えはこうなります。

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途中でちょんぎったものが0付近での近似に相当することを踏まえたら数Ⅲで習う極限の諸公式がより馴染みの深いものになると思います。途中でちょんぎったもののグラフを書いてみるとより理解が進むと思います。


さてここでe^xのマクローリン展開の式にiθ(θは任意の実数)を代入すると


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となりますよね?上の三角関数マクローリン展開の式とこの式をよ〜く見比べて下さい。何か気づきませんか?




なんと以下の式が成立するのです!!


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工学ではこの式をよく使います。なので工学系の人にオイラーの公式というとこれを連想されるそうです。上の式を使うと三角関数の様々な公式、例えば加法定理などを容易に証明することが出来ます。


あとは上の式にθ=πを代入し-1を移項すると…

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ついに世界一美しい式とも評されるオイラーの公式が示されました!


どうでしたか?細かい議論はしていませんがテイラー展開の雰囲気とオイラーの公式の証明の大筋は理解して頂けたと思います。


疑問点があればDM下さい!


ではまたの機会に!


*1:理由は式がシンプルで主張も綺麗で証明が容易な割に割と非自明なところがあるからです。中3の時に自力で証明できて嬉しかったのもあります。

*2:ちなみに僕がこの式を初めて見たのは小5のときでした。田舎の公立小学校で特に予習とかしてたわけでもないためこの式が何を意味してるのか分からないのはもちろん、eって何?って感じでした笑

*3:オイラーの公式という名前の公式は他にもあるがここではこれを指すことにする

*4:実は任意の複素数

*5:マクローリン型不等式なんて言ったりするそう

*6:正確にはf(x)が0の近傍で何回でも微分可能である(つまりC^∞級である)ときの話です

*7:マクローリン展開テイラー展開のa=0のときのこと

*8:実は任意の複素数